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ノルウェーで気づいたこと

キャンピングカーで旅行していると道路でキャンパー同士がすれ違う時に手を上げて挨拶をすることがあります。特に車種が同じであったりすると親近感が湧くのか、嬉々としている印象です。しかし、これもお国によって異なり、ノルウェーではキャンパー同士の挨拶は少ないように感じます。

そもそもノルウェー人は、かなり距離感を大事にする国民気質だそうです。物理的に近かったり、声やリアクションが大きいのはNG。初対面でのフレンドリーすぎる態度も嫌がられるとあって、ハイキングの時にすれ違っても基本的に挨拶はしません。

ドイツ人にしてみると、ハイキングで人に出会ったら挨拶する方が一般的なので、「ノルウェー人ってなんだか無愛想で親近感が沸かない」という印象になるようです。

私は日本人であるせいか、知らない人であれば特に挨拶をせず、無言ですれ違うことにもそれほど違和感は感じません。

いずれにしても、ノルウェーに入国して1週間でそこそこ話ができたのは外国人ばかりでした。その中で3人をご紹介します。

 

1人はイギリス人の60代の女性です。

昔クルーズ船やドイツのオクトーバーフェストで働いていたことがあるというので、おそらく飲食関係の方なのでしょう。フレンドリーでオープン、ウィットに富んだ感じはイギリス人らしい印象でした。そんな彼女は「最初の6年はノルウェーが大嫌いだったのよ。皆が距離を取るから、いつまでも他所者であることを突きつけられている感じだったわ。」と語りました。その後、パートナーとイギリスで暮らしてみた時期もあったのだそうです。しかし、「イギリスは医療システムが崩壊しているし、治安が悪いから、やはりこちらの方がいいと思って帰ってきたの」ということでした。昼前の海辺を散歩している時に出会ったので、休暇なのかそれともすでに年金生活なのか尋ねたところ、少し困ったような顔をし、「実はガンのステージが進んでいて、治療をしていてね」と言っていました。社会福祉の整っているノルウェーの方が治療に専念しやすいのかもしれません。

 

もう1人はオランダ人の女性です。

フェリーの船着き場でカフェをやっていて、ノルウェー語で話しかけられたので「ごめんなさい、ノルウェー語はもちろんのこと英語もかなり怪しいんです」と言ったら、アクセントから察したのか「あら!ドイツ語ならお互いにむしろ楽よ!」とドイツ語に切り替えてくれました。70歳ぐらいの御夫婦で、どちらもノルウェー人ではないものの、「ブリュッセルの独裁」に従わなければいけないEU加盟国から離れようと思って移住先を選定したのだといいます。「最初は自然豊かなカナダが良かったんだけれど、親が生きていたからやっぱりヨーロッパ大陸が近くて安心でね」とEUに加盟していないノルウェーにやってきたとのこと。手作りサンドイッチが驚くほど美味しく、小さな飾り気のない店なのに評価がとても高いのも納得です。もともと飲食店をやっていた人なのかもしれません。いつからこの店をやっているのかは分かりませんが、「30年前に決心すべきだったと今でも思うのよ」とノルウェーに移住できたことにとても満足している様子でした。ついでに、そもそもノルウェー人ってどんな感じと聞いてみたら、「そうねぇ、彼ら自身は心理的にも物理的にも距離を必要とするし、基本的には独立独歩なんだけれど、困っていたら本当に親身になって助けようとしてくれるの。一度ノルウェー人と友達になれたら、それは一生モノよ」と微笑んでいました。

 

もう1人は20年間キャンピングカーで旅を続けているという大きな犬を連れた80代の男性です。

年金生活に入るとともにキャンピングカーでの移動生活をはじめたのかもしれません。やや距離を感じる人でしたが、、犬同士が仲良くなり遊んでしまっているので、しかたなくぼつぼつと互いの話をしました。夏は北へ、冬は南へ向かうのだそうで、キャンピングカーと犬は変わっていくものの同じ生活スタイルを続けています。恐らくはどこかに住民登録がしてあって公的文書が届くようになっているのでしょう。

同じようにボートや船を使って定住せずに生活している人たちもいます。一方で、今も移動しながら生活している住民登録などもない国を持たないシンティ・ローマのような人たちもいます。昨今の彼らは集団でキャンピングカーで移動していく姿が時折見られます。

普通に働いていると、日常生活では行政や医療と無縁で生きるのは想像がつきませんが、旅をしているとわずかな時間で他人の人生が垣間見えることがあります。その中で、自分が人生において大切にしたいものは何か、自分は何が好きなのかを考える時間ができる気がします。

(Y・A)