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高校卒業資格(アビ)は大変、でもその先にはギャップイヤーが待っている?!

ドイツでは、基礎学校(Grundschule)を終えると、中等教育として大きく3つの進路に分かれます。

大学進学を目指す「ギムナジウム(Gymnasium)」、中堅職業を目指す「レアルシューレ(Realschule)」、職業訓練を重視する「ハウプトシューレ(Hauptschule)」です。

10歳で進路を選ぶのは早すぎるという声もありますが、努力や実力次第で進路変更も可能です。大学を目指して小学校からギムナジウムに進む割合はおよそ45%。

12年生(州によっては13年生)を修了し、アビトゥーア試験(以下「アビ」)に合格すると、高校卒業資格と同時に大学入学資格を得ることになります。

他にも、職業訓練校や専門学校を経て大学へ進学するルートもありますが、アビは最も一般的で王道の進学ルートです。

ドイツは連邦制のため、教育制度やアビの難易度は州によって異なりますが、基本的には高校最終2年間の成績とアビ試験の結果を合わせて評価されます。

一発勝負ではないため、たとえ成績が思わしくなくても、最後の2年間で頑張れば挽回できる仕組みです。そのため、最高学年の生徒たちは真剣に勉強に取り組み、学校全体の雰囲気も悪くありません。

 

アビ試験では、必修科目と選択科目の計5科目を、筆記や口頭で受験します。

試験会場は普段通っている学校で、1日に1科目ずつ、数週間にわたって実施されます。

筆記試験は1回4~5時間と長丁場で、試験中にトイレに行ったり軽食をとったりすることも可能です。試験問題は州から届いた封筒に入っており、試験監督が試験当日の朝に開封。

担当教員は、生徒たちの成果に期待と緊張を抱きながら、教室の前や廊下にお菓子を置いて応援することも。論述形式が中心なので、カンニングにはほとんど意味がありません。

試験時期も州によって異なりますが、南ドイツでは例年4月下旬から5月中旬に筆記試験が行われます。

 

我が家の末娘も今年アビを受験しました。

試験中に食べられるようにと軽食を持たせたものの、時間に余裕はなくほとんど手をつけられず。翌日は長時間書き続けたせいで「腕が痛い」とぼやいていました。

アビに合格すれば高校は卒業です。

そしてドイツには、ギャップイヤーという選択肢があります。

これは、卒業後すぐに大学へ進学せず、留学・ボランティア・インターンシップなど、自分の興味関心に基づいて過ごす自由な時間です。

もちろん、何もせず時間とお金を浪費してしまうリスクもありますが、目的を持って積極的に動くことで、自分の価値観や将来を見つめ直す貴重な機会になります。

見た目には無為に見える時間でも、人生の意味や方向性を深く考える大切な期間なのです。

 

残念ながら日本にはこのような制度がなく、子どもたちは小学校からずっと追われるように勉強し、休む間もなく大学・就職へと進んでいきます。

もっと若い人たちが「自分にとっての幸せとは何か」を立ち止まって考える時間を持てるような仕組みがあれば、と願わずにはいられません。

(Y.A)

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